まどろみ

東京に来てから、ずっと微睡んでいるように感じる。今のところ不満や苦痛はなく、順調に物事は進み、意識はすっきりとしない。すべてのものがショウ・ウィンドウに並んでいて、それを眺めて満足している。

 

しかし東京には寂しさがない。自分の身体が知覚できる寒々しさと、自分以外がすべて星空に見える自然がない。故郷のような友人に、便りを書くような味わいがない。偽りの冷風を浴びて、末端神経を粗雑に枯らされている。

 

いつかは目覚めるのだろうか。それともこれは、いずれ訪れる眠りへの、のりしろなのだろうか。暑中見舞いにしようとしていた葉書たちを、タロットのように捲りつづけている。