2023-01-01から1年間の記事一覧

バランス

なかなか寝付けない夢や、うなされて起きたらまだ夢だった、という夢をよく見る。眠れないことに対する忌避感は自分にとって存外大きいらしい。精神のバランスを崩すとすぐ眠れなくなる。そして自分はバランス感覚がない。 飯に対して、関心が薄い。食べてい…

なぜか今日は

漫然と布団でスマホを触っているだけの時間、教養と体力のない人間になってしまったと思う。探し物はここにはない。広告を見て不快になりたくなければ金を払え、という下品な仕事ばっかりだ。 チバユウスケが亡くなって、そのニュースを見てからずっと呼吸が…

短歌:トワイライト

アフリカのようなかさぶたひん剥いて もう人類はいませんでした 公園のベンチにピック置いたからいつでも弾いてくれていいから 五線譜の中を泳いでボーイングその雲だって雪を降らすよ 君が永久(トワ)?いいえ、わたしは…言いかけて重油が滲みだしてるほくろ…

まどろみ

東京に来てから、ずっと微睡んでいるように感じる。今のところ不満や苦痛はなく、順調に物事は進み、意識はすっきりとしない。すべてのものがショウ・ウィンドウに並んでいて、それを眺めて満足している。 しかし東京には寂しさがない。自分の身体が知覚でき…

境界線

風呂桶の端に左脛をぶつけた。いまだに自分の輪郭がわからないでいる。輪郭というのは自己と不安の境界線のことだ。 太宰の全集を買った。誕生日の一週間後のことだ。太宰で救われる、ギリギリの歳であるように思われた。学生生活の道筋を太宰に見出してから…

緑空

青空が恐いのは僕だけですか。青空はなにもないように見えます、吸いこまれる気がします、見えないけれど大勢の思いのようなものが詰まっている感じがします、それが恐いのです。 青空は僕の色です。だから気を抜くと青空に取り込まれてしまいます。だから機…

短歌連作:青色忌

物心つくまで青が見えなくて砂浜の貝くちにいれてた 新しい居場所の契りこの紙に青年月日を記入しなさい 百幾つ元素はあれど青色の塑像のためにあるものはなし 老いてなほ僕は僕はと言ひたがる青色すべて僕のものでも 芒だけ目を伏せている荒野には青色忌な…

雪の降らない街

やはり母に荷解きを手伝わせるべきではなかった。しかもよりによって、収納にものを詰めていく部分を。 玄関にある照明というのは概して光が弱く、玄関横にある収納の隅々まで照らすには全くもって不十分だ。そうして暗闇になった場所に生活用品が詰め込まれ…

転がる岩、僕には何が

観た映画の本数や、部屋にある本の量や、音楽をずっと聴いていることに対して「すごいね」という反応をされると、ひどく後ろめたさを感じる。それは自分がいかに現実から逃げているかという証拠だから。錠剤を一度にたくさん飲めるという自慢は、薬を必要と…

蝋燭

机で燃やしていた蝋燭が、自ら溶かした蝋に溺れて消えてしまった。蝋燭ではなくキャンドルという名前で売られていたそれは、安物だから芯が短いのだった。それに自分を重ねてしまったことに驚いて、蝋をいくらか捨てて何度か燃やしなおした。 25日にホラー映…

人形

人形が欲しい。それも、等身大ほどではなくとも、100センチくらいあるものが。冷蔵庫と本棚の間に私が座れるほどの隙間があるから、そこに座らせて、段ボールで玉座を作ってあげよう。動物のような食欲と、あたまでっかちの書物との間で、足元に飲みかけのウ…

詩集

詩集を作ると決めた。詩はまだない、しかし決めた。記憶にある年月を隅々まで見渡して、美しいかけらをかき集めてみれば、ひとつくらい形になるだろう。 そんなことを考えてシャワーを浴びると、浴室のライトがいつもよりも眩しく目に入る。詩集を完成させて…