北斎

北斎が好きだ。もちろん葛飾北斎のことである。家の北側にある書斎のことではない(自宅はワンルームである)。そんなに詳しくはないのだが、帰省中にはすみだ北斎美術館も訪れた。

 

ただ、昔から好きだったわけではない。むしろ富嶽三十六景に代表されるように日本文化のアイコンとなっていた北斎は、凄いとは思いつつもなんとなく遠ざけていた。有名すぎてその凄さにショックを受けるタイミングがなかったのである。広重との違いもいまいちわからなかったし。好きになったのは「日本美術応援団/山下裕二赤瀬川源平著」の中に出てきた絵に痺れてしまったからだ。それがこの絵だ

f:id:Mayfool:20180415195440j:plain「諸国滝廻り 木曽路ノ奥阿弥陀ヶ滝」(ネットより)

この構図がすごい。なんだあの丸は。デフォルメどころの話ではない。題を見なければ、滝だとは断言できないのではないか。これで北斎をもっと知りたいと思った。ちなみに諸国滝廻りはこの一枚を入れて8枚のシリーズだが他もなかなかいい絵である。しかし構図が一番面白いのはこれだろう(PC画面だと色が若干異なっている)。印象派は浮世絵に影響を受けたジャポニズムを展開したが、まだ西洋の写実的な描き方が基本にあることを感じられる絵であった。風景のデフォルメや構図では北斎のほうがよほど先鋭であっただろう。これは日本の絵が写実に重点を置いていなかったことも影響しているだろうが。

とどめとなったのは次の絵である

f:id:Mayfool:20180415205325j:plain「西瓜図」(こちらもネットから)

こんな静かで、夕方に少し薄暗くなった幽霊にも似た涼しさのある絵も描けるのかと思った。北斎の大胆な構図の版画からはイメージができなかった。ギャップ萌えである。

そこでとりあえず図書館で北斎の画集を漁った。初期のまだ北斎を名乗っていない時期はあまり面白くなかった。解説には北斎美人の原型が~などとあったが素人にはいまいちわからなかった。自分が好きなのはやはり浮世絵をやり始めてからだった。北斎漫画も描き方が指導されていたり、人の表情もどこかマヌケでおもしろい。諸国名橋奇覧も橋の形がヘンテコなのだ。絶対に諸国の橋ではなく、自分が描きたい構図になるように橋を描いている。飛越の堺つりはしなんて実在したら絶対に落ちるだろう(受験生の皆さんごめんなさい)。

ただ、やはり画集でも印刷の関係で色が違うように見えるので、実物を見ようとすみだ北斎美術館にいった。上に載せたふたつの絵が目当てだったのだが、どちらも展示されてなかった。西瓜図に関しては宮内庁三の丸尚蔵館蔵であるのでなくて当然なのだが、諸国滝廻りは当館所蔵だったので運が悪かった。ただ最後の作品と言われる昇竜図もみれたし行ってよかった。なによりショップでしりあがり寿先生の北斎の絵のパロディ作品が最高に面白かった。今「葛飾北斎 しりあがり寿」で検索してもそのポストカードは出てこなかったのでぜひ行って確認してほしい。

 

ポストカードは五枚購入したので適宜友人に送ろうと思う。届いた友人がくすりとしてくれれば幸いである。