車窓

タスクをすべて休止して1週間、電車で旅をしてきた。旅といっても移動距離が長くてほとんどの時間が電車の中だった。寝てばかりいた。車窓は常に雪原だった。線路はガタガタで、シカのため頻繁に減速した。

 

噴火湾には満月に近い、白い月が浮かんでいた。海は墨のような青色で、茶色混じりの白波が紺色の空との境界を示していた。除雪が追いつかなかったせいで1時間以上列車が立ち往生した後の月は、暖房の効きすぎた車内と比べてあまりに涼しげだった。

 

旅の初日に、酒のことを忘憂とも呼ぶことを知った。旅の目的はまさに憂鬱を忘れることであったので、当然毎日酒があった。ストレスで研ぎすぎた刃をむりやりなまくらにしていくような作業だった。

 

大学の友人たちがどんどん体調を崩していく中で、駅員さんに切符を見せるタイプの改札の駅で降りるような日が自分には必要だった。廃止の決まった駅は雪に埋もれていた。帰ってきてからは部屋で本を眺めていた。そういった孤独が必要な人間なのだ。孤独ではESを書けないのだけれど。