鳥瞰図

最近、ふとした事で感情が冷めてしまう。あと数時間後はこうしているのか、と思って楽しかったはずの予定も全て、すべてどうでもよくなってしまう。宿泊行事で部屋全員が寝静まって夢の世界で遊んでいる間、自分だけが目覚めてしまった時のあの居場所のなさに似ている。今も昔も、あまり寝付きは良くない。

 

1人でいる時に冷めるのは勝手にしろという感じだが、人と居る時になってしまうのは申し訳がない。その人といる時間を楽しみたいのに心はここにあらず、そして自分はそういった時に顔に出るしため息もついてしまいがちだ。この頃人と会うのは酒のある店が多いので、お酒でそういった感情を無くせたらいいのに、と思う。数杯で気分よくなる人間が羨ましい。飲み放題か宅飲み以外ではそれなりに酔っ払えない人間なので、東京では酔うのに金がかかりすぎる。

 

酔うと言いたいことが言えるようになるという人や本音が言いやすくなるという人がいる。支離滅裂なことや同じことを繰り返し言う人も。その原因は恐らく、酔うと会話の流れが追えなくなることにある。会話には話題や意味の流れがあって、それを見失うから流れから外れたことを言ってしまう、それを言えないことを言えるようになると表現しているのではないかと思う。

 

今日飲んだ店は数えきれないほどのメニューと化粧をバッチリ決めた女性のガラガラ声と髪型だけは整っている男の副流煙が特徴だった。多くの人のように、日々の愚痴を吐き出しアルコールと異性の魅力を摂取するだけで生きていけるような人間ならば悩まないのだろうけれど、そうであればこんなことは書いていないしバーで居心地の悪さも感じないだろう。満ち足りていない、という若者の身分証を毎日確認してから布団を抜け出す。

 

明日もまた、昼頃に起きるだろう。その前には2、3の夢を見て、その後は祖母とひとしきり噛み合わない会話をしてからベースを担いで電車に乗る。僕の視点はどんどん自分の体から離れて斜め後方上空から僕の行動を眺めている。これがもっと進めば鳥瞰図のひとつは描けるかもしれない。その時の街角には、きっとあなたも描き足しておくよ。