冬の星空を見ている人を、その首の角度のままナナカマドの木の下まで連れていきたい。美しさは比べるものではないけれど、赤い実が夜空に浮かんでいるように見えるのも知って欲しいから。

 

お互い美しいと知っているものを確認しあうことは、きっと必要なことなのだろう。でも君が知らないであろうことと僕の知らないであろうことを交換する行為は、それをしようという意志を含めて、とても素敵なことだと思う。

 

震えるほど寒くはない素面の帰り道で、ヘッドホンの音量を2マス上げる。なにも創造できない脳みその空間を埋め尽くすように。自分の足音も聴こえないまま歩いていると、着ているコートの内側の身体いっぱいに寂しさを感じる。そんな寂しさが好きだから、そのまま止まらずに歩く。誰かと住むことになっても、寂しさは自分で守りたい。

 

胃の余裕を感知して、コンビニに寄ろうか迷う。酒も買おうか迷う。酒は僕のわかりやすい欠点の1つで、僕は欠点ばかりが好きだ。迷った末に、今日は欠けたまま眠ることにした。欠けた場所を埋めてしまうのはまだ先のこと。東京にだって星空があり、ただ1人の時にしか見えていない。