人間のクズ

睡眠から目覚めると怠い体に対して目には鋭い痛みがある。痛みといったのは過剰で、実際には強めの痒み程度なのだけど毎朝あるから目を開けるのも嫌で、起床しても薄目で過ごしている。原因は伸びすぎた前髪だとはっきりしているのだけど、駅の千円カットは休業してしまったし、他の店を探すほど散髪に興味はない。

 

部屋にいるときはメタリックな塗装の長い水色のヘアピンで止めている。以前は父が自分の髪を切ってくれる時に使っていたが、自宅で散髪しなくなった時点から自分が受験期に髪を伸ばしすぎるまでの間、物置の肥やしと化していた。もともと2本あったのに気づいたら1本しかない。現状の前髪はピン1本では支えきれず、視野は規模を縮小しての活動を余儀なくされている。

 

人に会わないのだからこんな姿なのだが、いままでと服装や髪形はほとんど同じなのでコロナは関係ないのだろう。同期はオンラインでラボなどがある人もいるようだが、自分の研究室は全くオンラインでの何某はなく、自分はそれに甘えて毎日ぐうたらしている。本ばかり読んでいるし、朝は起きていない。読んでいる本も短歌や小説ばかりで、せめて一日に論文一本くらいは読みたいと思う。論文を読むことが果たして勉強なのかという疑問は誤魔化す。酒も進む。コロナという大きな不安によって今まであった不安や問題が覆い隠されようとしていて、無意識であれ意識的であれそれを推し進めようとする人の多さに辟易する。自分もその一部で、不安の隠れ蓑にコロナは使いやすい。

 

切実な人の多さに対して切実でない自分はなにを表現したらいいのだろう。価値の置き場がわからないこと、寝起きの悪さも眠りの浅さもきっと原因はここにあるんじゃないかしら、4月は1ページの日記も書けず1本の映画も観れず1本も煙草を吸っていないことも。