喫茶店にて

今年は秋が長かった。つまり、最初に紅葉を眺めてから初雪を浴びるまでの期間がずいぶん長かった。もうすぐ冬だ、という嫌な予感が長すぎてなんだかくたびれた。

 

先月は友人が来てくれて、一緒に旅行をした。空の広さにたいへん喜んでくれたようだった。自分が慣れてしまったものの価値を教えてもらえて、ずいぶん楽しかった。楽しいイベントが終わった直後はいつも体調も気分もガタ落ちしてしまうのだけど、その旅行の後は2週間ほど体がふわふわし続けていた。人生の伏線を回収しきった気分だった。

 

目覚めた時は風がなくて、雪が漂うように降っていた。こんな雪を見るといつも深海の底にいることを想像してしまう。深海にも魚サイズの公園があって、鉄棒や使えなくなったブランコや冷えきった滑り台なんかもあればいいのに。

 

暗い自室を抜け出して訪れた喫茶店は満席だった。昨日まで髪が守ってくれていた首筋を冬の息が撫でていった。伏線を埋める作業をしなければと思いつつ、1人でやる作業としては負担が重いかもしれない。