アコースティック

アコギを衝動買いした。してしまった、というべきかもしれない。うちにはレスポールがあるし、置く場所も少ない。壁が薄いから夜は弾けないし(隣人は時々弾いているけど)。エレキすら最近はあまり弾いていないのに、果たして活用できるのだろうかという不安はある。アコギサークルに入るという手もあるけど、今同じサークルにいる知人が既に兼サーしているので見学に行きにくい。

 

ただ、衝動買いしてしまうようなギターがとまたま楽器屋に置いてあったのがよくない。色はもちろん青色で、ネックは手の大きさぴったりだったしまるで体の一部だったみたいだ。音も理想的だったし、何より安かった。今年の夏に、先輩から高いギターを買うべきだとつよく勧められていたのに。

 

元からいたレスポールと並べておいてみると兄弟みたいで、ある程度仲良くなりそうで安心した。レスポールの機嫌をとるためにMAN WITH A MISSIONのget off my wayを弾いてから、小一時間アコギで弾き語りをした。アコギ慣れしていない貧弱な指先の皮がボロボロになったので今休憩しているところ。思った通り、コードチェンジの時に鳴るキュッという音が心地よい。自分の好きな女性ボーカルはみんなこのキュッという音に似た周波数を出せる気がする。

 

ちなみにこれまでの文章は全部嘘だ。今日の夢で僕はボロボロのアコギを部屋で弾いていた。パリにあるその白い部屋は本とレコードが無数に置いてあって、でも背の高い家具が無いせいでガランとしていた。外の石畳では友人と呼ぶほど仲良くなっていない中学時代、大学時代の知人が輪になって踊っていて、僕はどうしようもなく部屋にいるしかなかった。弦はサビだらけだったが、異人の自分はその街のどこで弦が買えるのか知らなかったのだ。14時間寝ていただけあって長い夢だった。

 

現実の僕はアコギの代わりにパティ・スミスのポスターを買った。今もそのアンニュイな表情で見つめられながら打っている。もっとやるべきことがあるだろうと言われている気がしてくる。こうしている間にも今日が減っていく。でも貴重なものほど使いたくなってしまうので仕方がないね。明日の夢ではもっといいアコギを弾いていたいと思う。