寒桜

東京では寒桜が咲いたらしい。そう書こうと思ってから数日が過ぎた。何ヶ月も雪が続くことを当たり前にした大学4年目の冬も、もう終盤のようだ。

 

これまでの冬は、雪が音を吸うことで訪れる静かさが苦痛だった。それによって際立つ除雪車の音も。手紙にもブログにもそればかり書いていた気もする。今年の冬は静かさが気にならなくなった。雪が降ってからは部屋でずっとヘッドホンをして映画とYouTubeばかり眺めていたから。眠れない夜も耳鳴りがしたから。本当は札幌にようやく馴染んだから、だと思いたい。ようやく自分の中で東京への執着が落ち着いた気がするから。

 

本当は何も怖くないのかもしれない。東京に帰ることも、研究室に行くことも、薄い友人関係も、ウイルスも、契約書も、金を得る手段のことも。ホラー映画はちゃんと怖いことを教えてくれる点で1番怖くないジャンルだから、そればかり観ていた。それを友人に伝えたら、それが悪夢の原因ではないかと言われた。薄い考察だった。

 

結局、自分がいかに淋しいかを書きたいだけなのだ。寒桜はこちらになく、雪の結晶だけが落ちている。