夜王子と月の姫

昨日の夢。僕は海の上を飛んでいた。背中に翼が生えていたように思うが、飛行中は自分の背中は見れないのでどうなっていたのかはわからない。飛ぶには翼以外の部分もバタバタと動かさねばいけなくて、数キロ飛んだ時点でもうクタクタだった。海には降りる場所もなかったし、あったとしても降り方を知らなかった。飛び立つ前に見た人間のことを思い出し、人間は飛ばなくていいなんて楽ちんだなぁと悪態をついた。

 

よく、夢を見る方だと思う。ここで言う夢は将来的な希望ではなくて、寝ている間の幻とされる映像のこと。夢判断は信じていない。昨日の苦労して空を飛ぶ夢は、きっと自分が夜更かし子どもだったからだ。

 

毎日の間に夢が挿入されていることで、僕は自分の連続性を疑っている。本当に連続性があるならば、起きてから自分の設定や昨日のことなんかを思い出す時間をなくしてほしい。調子が悪い日はこれだけで数時間使ってしまう。掃除したはずなのに落ちている髪の毛、机の上から移動している本、それらが妙に気にかかる。

 

夢の内容も、毎日バラバラなのだが、7割くらいの確率で同じ街での出来事のような気がする。これに気付いてから、少しずつ夢の中の街の地図を作っている。ここを抜けるとアパートがあって、畑脇の曲がった道の先は山に続いている………歩く場所は夢ごとにズレているので重ね合わせるのも大変だ。現実(貴方がこの文章を読める世界のこと)では訪れた記憶のない街、そこで別の僕は連続性もなく暮らしている。

 

人と暮らしていると、相対的に現実の連続性をなんとなく信じられる。1人だとこれが出来ない。いつ起きても同じ部屋、同じ視界。カーテンを開ける時はいつも少しだけ怖い。これが少しでなくなったら、入院するだろうと思う。現実に興味が出ないのは絶望的だ。でも絶望を肯定しようと思っている。その肯定すらも出来ない、というのが絶望の本質だからね。