深夜高速

今は夜、高速道路を走るバスからは遠くに1列に並ぶオレンジの明かりが見える。その並びと色からしてきっと街灯なのであるが、もしそれが街灯でなかったとしたら、そう例えば家の明かりだとしたらどうだろうか。自分なら家は勘弁だ。等間隔の分譲住宅に魅力を感じないし、オレンジの灯りも嫌いだ。やはり玄関前はブルーライトにして欲しい。住人が不眠症だと一目でわかるように。

 

灯りは僕の後方へ流れて行き、目の前は雪ばかりになった。東京から来た友人には日光の照り返しが眩しくて仕方ないらしい。僕の持っているサングラスは冬服と相性が悪いので貸せなかった。右側のノーズパットも取れてしまったから、サングラスをしていると鼻の右側にだけ2つ小さな跡が出来る。父親の持っていたジョン・レノン風のサングラスをもらって置くべきだった、と少し思う。バスに一緒に乗った友人はビートルズ好きだから、きっと気に入っただろう。

 

景色だけでなく時間も後方へ流れて行き、バスを降りてから24時間が経過した。この間に僕は食欲と格闘し、いつの間にか喉は腫れてしまった。部屋から出ていないので、風邪の方からわざわざうちにやって来てくれたようだ。野田洋次郎の歌詞みたいだと思ったけれど、実際はたいして似てなかったのでわからなくても気にしないように。気づかれないことが前提の伏線はまだまだ沢山あるからね。

 

喉が痛む前は、アートとは何かを考えながらギターを練習した。美術が美を表すこと、美の発見だとしたらそれを内包するアートとは?最近ぼんやり考えていたことの中では1番一般的な疑問だ。そんなことを考えながら弾いた曲は3月6日のライブでやる。ギターを持って人と会うのは2年ぶりだ。何も持っていない僕よりは格好いいと思うのだが、いかが?