蛸酢

本物のタコスが食いたい、とカップ麺をすすりながら考える。そのカップ麺はメキシカンタコス味みたいな名前で、匂いこそタコスで期待に胸を膨らませていたのだが、待ちすぎて伸びた麺の食感ではやはり求タコス心を満たすことは出来なかった。麺が無くなった後にちっこい合成肉や野菜を探すのも、なんともいえずケチ臭い。タコスはやはり、具をてんこ盛りにして、トマトの汁をボタボタ垂らしながら頬張るのが良い。

 

高二の時にアメリカで食べたタコスは、今まで食べた中で1番美味かった。その時は何日もギトギトのハンバーガーを食べさせられ続けていて、もう油の匂いには辟易していた。アメリカのハンバーガーには、日本にはない独特の匂いがあり、それがそこら中に充満しているのである。そんな時のタコスは最高に美味しくて、自分で作って食べる形式だったから4つも食べた。皮が余っていたらもっと食べただろう。アメリカで1番美味しかったのがメキシコ料理なのも、また面白い。

 

ただ、タコスなんて普段は食べる機会がない。大学生になってから食べていないかもしれない。思い出せるのは、先月に食べたタコライスしかない。タコライスというのはタコスの具を米に掛けて食べるという、けったいなものである。登山前にキャンプ場で食べたのだが、その時は風邪をひいていたから酷い味がした。周りは美味い美味いと言っていたが、本当だろうか。その日は寒気がして、皆がテントで寝る中1人車中泊をした。

 

夜の大学でカップ麺をすすりながら、過去のことを思い出す。学内のセコマは2階が飲食スペースになっているのだが、深夜なのに席が混んでいて座れなかった。野外のベンチでいいかと思ったら、寒くて学部の建物に逃げ込んだ。カップ麺で暖を取る、7月。深夜でも、建物の入口は人通りがある。今夜もレポート、明日もレポート。明日は米を食えるといいな。