穴があったら

大学では、生き物の勉強をしている。研究と言えるほどのことはしていなくて、精々お勉強レベルだ。かと言って、生き物が好きという訳ではなく生物学が面白かったからこっちに来てみたというだけだ。

 

ただ学科同期は生き物好きが多いので、水族館や動物園に行ったりすると楽しそうにしている。自分はあまりそれらに楽しめず、檻やアクリルや堀の向こうにいる生き物に自分が干渉出来ないこと、向こう側の生き物も僕に何も出来ないことに不満を覚えたりしている。だいたい、そういった場所には大声を出して走るガキが多すぎる。

 

小学生の時も動物園を楽しめていたのかわからない。無料配布の園内マップ上に各ケージに何が何個体いるか記し、自分のメモ帳に動物の解説をすべて写し取っていた。自分だけの図鑑を作ることで何か素晴らしいものが得られるという確信がきっとあった。

 

そういった盲信は、ずいぶんと減ってしまった。素晴らしい何かは僕の欠陥を埋めるものだったかもしれないが、今はいくつもの欠陥が穴になって体中に残っている。寝ようとしているとそうした穴に風が通る気がする。穴の内壁をワラジムシ状のものが這っている気がする。その穴を埋めなければ眠れないような気がしているが、毎晩その穴は諦めが塞いでしまって結局なにも変えられないまま次のチャプターに移っている。目覚めると体中に散らばっていた穴がひとつの大穴になって居座っていて、そこに綺麗な諦めが満ちるまで布団でじっとしなければならない。急に起きては貧血で苦しむ。

 

酒をやめれれば、その欠陥のいくつかは塞がると信じている部分がある。塞がらないと怖いから、酒を止められないでいる。酒を辞めてもきっと変わることなんてないし、思うより自分は欠陥品でないようだけれど。