東京

東京の青空が好きだ。札幌の空は何にもないからっぽの空で、綺麗さで言えば札幌の方がきっと空気は澄んでいるのだけれど、自分はもやのかかったような東京の青が好きだ。それはフィルムカメラで撮った青、CDジャケットに描かれていた青、そして自分が育った都市の青。

 

東京は建物も木もてんでバラバラの高さに伸びていて、その凸凹に切り取られた空を見ていると空がちゃんと高いものだとわかる。手を伸ばしたくらいじゃ届かないものだとわかる。札幌は建物も木も平原も同じ高さのものが固まっているのだから、空の高さなんて分かりやしない。北海道で空の高さを知りたいなら、汗を流して山によじ登るしかない。

 

成田から飛び上がると、数時間前まで歩いていた東京は白い靄の向こう側だった。東京はこうして守られていることを確認した飛行機は靄の上まで高度を上げて、眩しすぎる青空で安定した。眠りについて、起きた頃には灰色の空の中、新千歳上空だった。

 

東京で見ることのできる星の多少なんてどうでもいいことだ。見えないものこそ素敵と教えてくれて、星より素敵なものが咲いている都市。東京への愛を込めて。